Knowledge/解説コラム

実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

2017/05/10

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2017年5月2日、実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下、「本実務対応報告」という)を公表しました。本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者が公共施設等運営権を取得する取引(更新投資を含む)に関する会計処理等について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的としています。



1.経緯


2011年、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(以下、「PFI法」※1 という)が改正され、公共施設等運営権制度が新たに導入されました。これを受けて、ASBJでは、公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等について審議を行い、今般、本実務対応報告として公表したものです。


※1 PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力および技術的能力を活用して行う手法をいう。


【公共施設等運営事業の概要】


図表1:公共施設等運営権制度のイメージ


公共施設等運営権制度の概要(PFI法)
  • 公共施設等運営権制度とは、利用料金の徴収を行う公共施設等( PFI法第2条第1項に規定する道路、空港、水道等の公共施設、庁舎等の公用施設、教育文化施設等の公益的施設等)について、当該施設の所有権を公共主体が有したままで、その運営権を民間事業者に設定する制度である。
  • 公共施設等運営権とは、公共施設等運営事業を実施する権利であり、民間事業者は、公共施設等運営権の設定を受けて、その資金、ノウハウを活用した事業運営等を行い、利用料金を自らの収入として徴収する。
  • 公共施設等運営権は物件とみなされており、抵当権の設定等が可能である。

図表1


出典:「実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公表」(2017年5月2日ASBJ)より作成



2.本実務対応報告のポイント


(1)範囲


本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者が実施する以下の取引に関する会計処理および開示に適用されます(実務対応報告第2項)。


  • 公共施設等運営権を取得する取引
  • 公共施設等に係る更新投資(運営権者が行う公共施設等の維持管理)を実施する取引


(2)公共施設等運営権の取得時の会計処理


運営権者は、公共施設等運営権を取得した時に、管理者等と運営権者との間で締結される実施契約(PFI法第22条第1項に規定する公共施設等運営権実施契約)において定められた運営権対価を無形固定資産として計上することとしています※2


※2 公共施設等運営事業は複数の公共施設等が一体となって1つの事業を構成しており、PFI法上、その分割・併合が認められていないことから、会計処理の単位については、公共施設等運営権を公共施設等ごとに分割せずに一括して処理することとされている(実務対応報告第29項)。


図表2:公共施設等運営権の取得時の会計処理

会計処理減価償却方法
  • 運営権対価が一括払いの場合(実務対応報告第3項)
    • 合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上する。
  • 無形固定資産として計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数とし、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法により期間配分する(実務対応報告第8項)。
  • 一定の条件の下で運営権設定期間を延長することができる条項(延長オプション)が定められる場合、運営権者が当該条項を行使する意思が明らかな場合を除き、延長可能な期間は耐用年数に含めない(実務対応報告第9項)。
  • 運営権対価が分割払いの場合(実務対応報告第4項)
    • 資産および負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値による。※3
    • 運営権対価の支出額の総額とその現在価値との差額については、運営権設定期間にわたり利息法により配分する。

※3 現在価値の算定にあたっては、運営権者の契約不履行に係るリスク(運営権者の信用リスク)を割引率に反映する。また支出額の総額と現在価値との差額は、運営権設定期間にわたり利息法により配分する(実務対応報告第5項)。

(3)更新投資


更新投資のうち、資本的支出に該当する部分(所有権が管理者等に帰属するものに限る。以下同じ。)については、その更新投資の内容に応じて、以下のとおり会計処理することとしています。


図表3:更新投資に関する会計処理

更新投資の内容資産・負債の計上額減価償却方法
  • 以下の両方を満たす場合
  • ① 大半の更新投資の実施時期および対象となる公共施設等の具体的な設備の内容が実施契約等で提示されている② 更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額と支出時期を合理的に見積ることができる
  • 運営権の取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値を負債として計上し、同額を資産として計上する(実務対応報告第12項(2))※4
  • 更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額とその現在価値との差額については、利息法により配分する(実務対応報告第13項)。
  • 運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却方法により、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に期間配分する(実務対応報告第15項(2))
  • 上記以外の場合
  • 更新投資を実施した時に、当該更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関する支出額を資産として計上する(実務対応報告第12項(1))。
  • 更新投資を実施した時より、当該更新投資に係る資産の経済的耐用年数※5にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却方法により、その取得原価から残存価額を控除した額を各事業年度に期間配分する(実務対応報告第15項(1))。

※4 現在価値算定に用いる割引率は、運営権対価の支出額の総額の現在価値の算定に用いたものと同様の利率とする(実務対応報告第13項)。※5 経済的耐用年数が公共施設等運営権の残存する運営権設定期間を上回る場合は、当該残存する運営権設定期間とする。

(4)減損


公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象となり、減損損失の認識の判定および測定における資産のグルーピングについては、以下のとおり行うこととされています(実務対応報告第10項)。


  • 原則:実施契約に定められた公共施設等運営権の単位で行う
  • 例外:公共施設等ごとに合理的な基準※6に基づき分割した公共施設等運営権の単位で行う

※6 管理会計上の区分、投資の意思決定を行う際の単位、継続的な収支の把握がなされている単位および他の単位から生じるキャッシュ・イン・フローとの相互補完性を考慮する。



(5)プロフィットシェアリング


実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回った時に、運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項(プロフィットシェアリング条項)が設けられている場合には、当該条項に基づき各期に算定される支出額を、当該期の費用として処理することとされています(実務対応報告第11項)。



(6)開示


① 表示


公共施設等運営権に係る資産および負債については、以下のとおり表示することとされています(実務対応報告第16項~19項)。


  • 公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に公共施設等運営権などその内容を示す科目で表示する。
  • 更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目で表示する。
  • 運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、支払期限に応じて流動負債・固定負債に区分し、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目で表示する。
  • 第12項(2)に基づき計上した更新投資に係る負債は、支払期限に応じて流動負債・固定負債に区分し、その内容を示す科目で表示する。


② 注記事項


運営権者は、原則として、次の事項を公共施設等運営事業ごとに注記することとしています(実務対応報告第20項)※7


  1. 運営権者が取得した公共施設等運営事業の概要
  2. ① 公共施設等運営権の対象となる公共施設等の内容② 実施契約に定められた運営権対価の支出方法③ 運営権設定期間④ 残存する運営権設定期間⑤ プロフィットシェアリング条項の概要など
  3. 公共施設等運営権の減価償却の方法
  4. 更新投資に係る事項
  5. ① 主な更新投資の内容および投資を予定している時期② 運営権者が採用した更新投資に係る資産および負債の計上方法③ 更新投資に係る資産の減価償却の方法④ 第12項(1)に基づき更新投資に係る資産を計上する場合、翌期以降に支出すると見込まれる更新投資のうち、資本的支出に該当する部分について、合理的に見積ることが可能な部分の内容およびその金額

※7 ただし、同一の実施契約において複数の公共施設等運営権を対象とすることにより一体的な運営等を行う場合、または個々の公共施設等運営権の重要性は乏しいが、同一種類の複数の公共施設等運営権全体については重要性が乏しくない場合には、集約して注記することができる。



3.適用時期等


2017年5月31日以後終了する事業年度および四半期会計期間から適用されます(実務対応報告第21項)。


以上





関連リンク:
「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告公開草案第48号)の公表


外部リンク:
ASBJ 実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」の公表