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IASB、IFRS第9号の狭い範囲の修正「負の補償を伴う期限前償還要素」を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

2017/10/20

国際会計基準審議会(IASB)は、2017年10月12日、IFRS第9号「金融商品」に関する狭い範囲の修正「負の補償を伴う期限前償還要素」(以下、「本修正」という)を公表しました。


本修正では、①いわゆる負の補償を伴う特定の金融資産について、一定の場合には、純損益を通じた公正価値(FVPL)ではなく、償却原価またはその他の包括利益を通じた公正価値(FVOCI)で測定することを認めるとともに、②金融負債の条件変更に関する会計処理についての考え方を再確認しています。




【概要】


① 負の補償を伴う期限前償還要素


期限前償還オプション付きの負債性金融商品について、契約上、元本・利息の残存キャッシュフローを解約オプション行使時の市場金利で割引いた現在価値で償還することが認められている場合、契約開始後の金利動向により、期限前償還金額が当初契約条件による元本および利息の未払額を上回る場合もあれば下回る場合もあります。


「負の補償」とは、当初契約時より市場金利が上昇したことによって、結果として期限前償還金額が当初契約条件による元本および利息の未払額を下回る場合に発生し、オプションを行使した債務者が、期限前償還金額と元本および利息の未払額との金利差異に相当する補償を受取るという考え方に基づいています。このように、満期前に契約の解約を選択した取引当事者が、一定の金額を相手方に対して支払うのではなく、相手方より受取ることをIFRS第9号では「負の補償」と呼んでいます(BC4.217項)。


契約の早期解約を認める契約条件については、現行のIFRS第9号では、期限前償還金額が実質的に元本および利息の未払額を表している場合(合理的な補償の追加的な支払を含む)のみ、元本および利息の支払いのみである契約上のキャッシュフロー要件(SPPI要件)を満たすものとされています(B4.1.11項(b)、B4.1.12項(b))。したがって、「負の補償」を伴う期限前償還要素を含んだ金融資産は、現行のIFRS第9号の定めではSPPI要件を満たさないこととなり、FVPLで測定されることになります。


本修正では、こうした期限前償還可能な金融資産について、解約オプションを行使する一方が他方に追加的な補償(期限前償還ペナルティ)を支払う場合だけでなく、受取る場合であっても、当該補償が契約の早期終了に対して合理的なものである限り、SPPI要件を満たすものとしています。したがって、本修正により、負の補償を伴う特定の期限前償還可能な金融資産についても、事業モデルに応じて償却原価またはFVOCIで測定することが認められることとなります(B4.1.12A項)。


ただし、IFRS第9号では、「合理的な補償」の具体的な定義をしていませんので、本修正を適用するにあたっては、当初契約条件やその後の市場金利の変動による影響等に基づいて判断することが求められます。


〔適用日〕


2019年1月1日以後開始する事業年度から適用されます。早期適用は認められています。



② 金融負債の条件変更


IASBは、IFRS第9号に基づいた金融負債の条件変更の会計処理について議論しました。すなわち、償却原価で測定される金融負債が条件変更されたものの、認識の中止に該当しない場合には、条件変更に伴う償却原価の調整額を利得または損失として純損益で認識することを確認しています(BC4.252 - 253項)。


償却原価の調整額は、当初の契約上のキャッシュフローと条件変更後のキャッシュフローとの差額を当初実効金利で割引くことにより求められます。IAS第39号では、通常、当該調整額を条件変更時の純損益ではなく、条件変更後の負債の残存期間にわたって償却されていましたので、IFRS第9号を適用するにあたっては、従来の会計処理からの変更による影響が生じる可能性があります。


以上



外部リンク:
IASB issues narrow-scope amendments to IFRS 9 and IAS 28
ASBJ IASBがIFRS第9号及びIAS第28号の狭い範囲の修正を公表