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ASBJ、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

2017/12/11

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2017年12月6日、実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」(以下、「本公開草案」という)を公表しました。本公開草案は、資金決済法に規定する仮想通貨の会計処理および開示に関する当面の取扱いとして、実務上の取扱いを明らかにすることを目的として公表されています。


コメント募集期限:2018年2月6日



1.公表の経緯


2016年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28 年法律第62 号)により、「資金決済に関する法律」(平成21 年法律第59 号。以下「資金決済法」という。)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。また、仮想通貨交換業者に対しては、2017年4月1日の属する事業年度の翌事業年度より、監査法人等による財務諸表監査が義務付けられています(資金決済法第63 条の14 第3 項)。


こうした中で、ASBJでは、仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用の観点および仮想通貨に係る会計処理が明確にされない場合には多様な会計実務が形成される可能性がある点を踏まえ、仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する審議を行ってきました。なお、仮想通貨に関連するビジネスは初期段階にあり、現時点では今後の進展を予測することは難しいこと、加えて仮想通貨の私法上の位置づけが明らかではないことから、本公開草案においては、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めているとされています



2.本公開草案の概要


(1)範 囲


本公開草案は、資金決済法に規定するすべての仮想通貨を対象とすることを提案しています(本公開草案第3 項)。


【仮想通貨の定義】


資金決済法上、仮想通貨は次のように定義されています(資金決済法第2条第5項第1号および第2号)。

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。
  2. 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。

つまり、仮想通貨とは、①不特定の者を相手方として代金の支払いおよび購入・売却等ができる財産的価値を有するものであって、②電子的に記録されて移転可能であり、かつ③法定通貨または通貨建て資産ではないものとされています。


これに関連して、いわゆる前払式支払手段発行者が発行する「プリペイドカード」やポイント・サービスにおける「ポイント」は、特定の発行者が存在し、当該発行者が認めた範囲でのみ利用可能であること等から、資金決済法上の仮想通貨には該当しないとされています(金融庁:仮想通貨交換業者関係(事務ガイドライン第三分冊:金融会社関16))。



(2)会計処理


本公開草案では、仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が保有する仮想通貨および仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理について、主に以下の提案がなされています。


① 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理(本公開草案第5 項から第13 項)

項目会計処理案
期末における仮想通貨の評価
  • 活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益とする。
  • 活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。処分見込価額が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、差額は当期の損失とする。
活発な市場の判断規準
  • 継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所等において十分な数量および頻度で取引が行われている場合をいう。
活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格
  • 仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所等における取引価格等を用いる。
  • 仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所等が自己の運営する仮想通貨取引所等である場合、当該仮想通貨取引所等における取引価格等が「公正な評価額」を示しているときに限り、時価として期末評価に用いることができる。
仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い
  • 活発な市場が存在する仮想通貨が、その後、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合、活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益とする。
仮想通貨の売却損益の認識時点
  • 売買の合意が成立した時点において売却損益を認識する。

② 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理(本公開草案第14 項から第15 項)

項目会計処理案
預託者から預かった仮想通貨に係る資産・負債の認識
  • 預託の合意に基づいて預かった仮想通貨を預かった時の時価により資産として認識し、同時に、預託者に対する返還義務を負債として認識する。
  • 負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とする。
期末の資産の評価および負債の貸借対照表価額
  • 預かった仮想通貨に係る資産の期末の帳簿価額について、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離したうえで、保有する仮想通貨と同様の方法により評価を行う。
  • 預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とする。


(3)開 示(本公開草案第16 項から第17項)


本公開草案では、仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の開示について、主に以下の提案がなされています。

項目開示案
表示
  • 仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する。
注記事項
  • 期末日において保有する仮想通貨および預託者から預かっている仮想通貨について、次の事項を注記する。① 期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額② 預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額③ 期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な市場が存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量および貸借対照表価額。ただし、貸借対照表価額が僅少な仮想通貨については、集約して記載することができる。
  • なお、期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額および預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができる。


(4)適用時期(本公開草案第18 項)


本公開草案は、2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することを提案しています。ただし、公表日以後終了する事業年度および四半期会計期間から適用することができることも提案しています。


以上



外部リンク:
ASBJ、「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表