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ASBJ「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を公表

プライムジャパン・コンサルティング
会計情報リサーチ

2018/03/20

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2018年3月14日、実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下、「本実務対応報告」という)を公表しました。

本実務対応報告は、資金決済法に規定する仮想通貨の会計処理および開示に関する当面の取扱いとして、必要最小限の項目について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的として公表されています。


1.公表の経緯

2016年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28 年法律第62 号)」により、「資金決済に関する法律(平成21 年法律第59 号)」(以下、「資金決済法」という)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。

また、仮想通貨交換業者に対しては、2017年4月1日の属する事業年度の翌事業年度より、監査法人等による財務諸表監査が義務付けられています(資金決済法第63 条の14 第3 項)。


こうした流れを受けて、ASBJでは、仮想通貨交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用の観点および仮想通貨に係る会計処理が明確にされない場合には、多様な会計実務が形成される可能性がある点を踏まえ、仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する審議を重ね、2017年12月、仮想通貨に係る会計上の取扱いに関する公開草案を公表しました。

本実務対応報告は、ASBJに対して寄せられたコメントを踏まえ、公開草案の内容の一部について明確化を図った上で、今般、公表に至ったものです。

なお、仮想通貨に関連するビジネスは初期段階にあり、現時点では今後の進展を予測することは難しいこと、また仮想通貨の私法上の位置づけが明らかではないことを踏まえ、本実務対応報告では、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみが定められています(「2.本実務対応報告の概要(1)範囲」参照)。


2.本実務対応報告の概要

(1)範囲

本実務対応報告は、資金決済法に規定する仮想通貨を対象としています。

ただし、自己(自己の関係会社を含む)の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除きます(本実務対応報告第3項)※1。

※1この点、自己(自己の関係会社を含む)の発行した仮想通貨の取引の実態とそこから生じる論点が網羅的に把握されていない状況にあることから、当該仮想通貨については、本実務対応報告の範囲から除外することとされている。

参考:仮想通貨の定義

資金決済法上の仮想通貨とは、次のいずれかに該当するものと定義されている(資金決済法第2条第5項第1号及び第2号)。

  1. 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

  2. 不特定の者を相手方として、(1)に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

つまり、資金決済法における仮想通貨とは、以下の3 要件をすべて満たす財産的価値を有するものをいいます。

  1. 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換可能
  2. 電子的に記録され、移転可能
  3. 法定通貨または法定通貨建ての資産ではない

前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービスにおける「ポイント」は、上記要件を満たさず、資金決済法上の仮想通貨には該当しないとされています。

またいわゆる仮想通貨が資金決済法上の仮想通貨に該当するか否かは、個別事例ごとに取引の実態に即して実質的に判断されることとされています(金融庁:仮想通貨交換業者関係(事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係16))。


(2)会計処理


仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が保有する仮想通貨および仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理に係る主な内容は以下のとおりです。


① 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の会計処理(本実務対応報告第5項から第13項)

項目
会計処理
期末における仮想通貨の評価
  • 活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益とする。
  • 活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。ただし、期末における処分見込価額が取得原価を下回る場合は、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価との差額は当期の損失とする。
活発な市場の判断規準
  • 継続的に価格情報が提供される程度に仮想通貨取引所または仮想通貨販売所(以下、「仮想通貨取引所等」という)において十分な数量および頻度で取引が行われている場合をいう。
活発な市場が存在する仮想通貨の市場価格
  • 保有する仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所等における取引価格等を用いる。
  • 仮想通貨交換業者において、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所等が自己の運営する仮想通貨取引所等である場合、当該仮想通貨取引所等における取引価格等が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができる。
仮想通貨の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い
  • 活発な市場が存在する仮想通貨が、その後、活発な市場が存在しない仮想通貨となった場合には、活発な市場が存在しない仮想通貨となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理する。
仮想通貨の売却損益の認識時点
  • 当該仮想通貨の売買の合意が成立した時点において売却損益を認識する。

② 仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の会計処理(本実務対応報告第14項から15項)

項目
会計処理
預託者から預かった仮想通貨に係る資産・負債の認識
  • 預託者との預託の合意に基づいて仮想通貨を預かった時に、当該時点の時価により資産として認識する。同時に、預託者に対する返還義務を負債として認識する。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった仮想通貨に係る資産の帳簿価額と同額とする。

期末の評価
  • 預託者から預かった仮想通貨に係る期末の帳簿価額については、仮想通貨交換業者が保有する同一種類の仮想通貨から簿価分離したうえで、保有する仮想通貨の会計処理と同様の方法により評価する。
  • 預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額は、対応する預かった仮想通貨に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とし、損益は計上しない。


(3)開 示(本公開草案第16 項から第17項)


項目
開示
表示
  • 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、当該仮想通貨の売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する。
注記事項
  • 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨、および仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨について、次の事項を注記する。
    ① 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
    ② 仮想通貨交換業者が預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表価額の合計額
    ③ 仮想通貨交換業者または仮想通貨利用者が期末日において保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と活発な存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量および貸借対照表価額(ただし、貸借対照表価額が僅少な仮想通貨については、集約して記載することができる)
  • なお、期末日において保有する仮想通貨の貸借対照表価額の合計額および預託者から預かっている仮想通貨の貸借対照表額の合計額が資産総額に比して重要でない場合には、上記の注記を省略することができる。


(4)適用時期等(本実務対応報告第18項)


本実務対応報告は、2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されます。ただし、本実務対応報告の公表日以後終了する事業年度および四半期会計期間から早期適用することができます。


以上



外部リンク:
実務対応報告第38号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」